公開: 2023年3月15日
更新: 2023年4月10日
中世前半のヨーロッパにおいては、羊の皮の上に、インクを浸み込ませたペンで、手本の内容を書き写す、筆写を基本とした本づくりが基本でした。初期の修道院では、一人の人が、一冊の本を書き写す方法が使われていました。しかし、中世も中頃になると、分業方式を取り入れ、数多くの人が、別々のページを担当し、同じ内容を大量に筆写するようになりました。そのようにして筆写されたページを集めて、1巻の本にまとめるようになりました。
15世紀に活版印刷機が開発されると、筆写していた本の生産方式に、印刷機を導入した、書物の大量印刷方法が確立しました。そのためには、印刷に使われる紙の大量生産も必要です。ヨーロッパの社会では、文字数の少ないアルファベットが共通に使われていたため、活字も大量生産できるため、印刷物生産のコスト低減が容易だったと言えます。
ルネッサンス後のヨーロッパにおいて、一般の人々の知的水準が大きく向上した背景には、印刷技術の進歩と、印刷業の著しい発展があったと考えられています。これは、情報の複写コストが大きく低減して、多くの人々が安価に情報を得ることが可能になったからです。これによって、社会が大きく変わり、ヨーロッパは、国王や貴族中心の世襲制度の中世から、国民を中心とした民主主義の近代社会に変って行きました。